症例紹介

ぐったりしている食欲がない

高血圧

高血圧は、心臓病・腎臓病・内分泌疾患などでしばしば二次的に認められますが、放置しておくと、高血圧が原因で重い症状が現れることがあります。アメリカ獣医内科学会(ACVIM)は、犬猫での血圧測定と全身性高血圧の診断および治療に関するガイドライン(ACVIMガイドライン)を公表しています。このガイドラインでは、血圧を高血圧によって臓器に組織障害が発生する危険度と関連付けて分類しています。
高血圧で組織障害が起こりやすいのは、「腎臓」「眼」「中枢神経」「心臓血管系」の4カ所です。

「腎臓」の障害は、多飲多尿・体重減少・食欲不振・嘔吐等の症状として現れます。尿検査で蛋白尿が認められる時は、高血圧が原因の場合があります。

「眼」の障害は、突然の失明・瞳孔の散大・赤目(眼内出血)等の症状として現れます。眼底検査で、網膜浮腫/剥離・眼底血管の蛇行・眼底出血・視神経乳頭の浮腫等があるかどうかで判定します。特に、網膜病変が認められた場合の血圧は、その他の組織障害が認められる場合に比較して、高血圧が著しいことがわかっていますので、網膜病変は、高血圧に伴うすべての症状の中でも、最も重要な所見となります。

「中枢神経」の障害は、痙攣発作・虚脱・無関心・見当識障害・抑鬱・眼振・斜頚・運動失調等の症状として現れます。これらは高血圧による脳浮腫・脳内出血・脳梗塞等が原因で起こります。神経学的検査(身体検査による神経反射の判定)やMRI検査(動物では、全身麻酔下で実施)で判定します。

「心臓血管系」の障害は、運動不耐性/呼吸促迫等の心不全兆候・心雑音・不整脈等の症状として現れます。胸部X線検査・心エコー検査・血液検査等で判定します。
ACVIMガイドラインでは、高血圧治療の開始の目安として、①「眼」「中枢神経」に組織障害が認められる場合では、危険度Ⅰの段階から ②「腎臓」「心臓血管系」に組織障害が認められ場合では、危険度Ⅱ以上の段階からを推奨しています。

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